青葉市子『時報』 in 石巻市
宮城県石巻市で東日本大震災の復興を目的として開催された芸術祭『リボーンアートフェスティバル』。
死生観や自然観が主題となる作品が多く、実行委員長はMr.Childrenのプロデューサーとしても有名な小林武史さんで、7組のキュレーターがそれぞれのエリアを担当しています。
そのイベント(作品)の一環として、歌手の青葉市子さんが「時報」を担当。普段石巻市では、朝7時と正午、それから夕方17時の一日に三度時報の音楽が流れると言い、期間中は、この時間になると、電子音に青葉市子さんの澄んだ声が重なり、時間の区切りを伝えてくれるとのこと。
青葉市子さんは、1990年生まれの京都府出身。透明感のある美しい歌声と曲、幻想的な歌詞が魅力のシンガーソングライターです。
この青葉市子さんの『時報』ですが、残念ながら住民の苦情で展示が中止となったようです。
同作は、石巻市の時報を、いままでと同じ楽曲を用いながら、青葉自身の声を使って録音制作したものに変えるというもの。同芸術祭は「より豊かな音の響きが街の風景に新たな彩りとして溶け込んでいくことを想定して作品として」本作を設置したが、「会期が始まってから数日間で、日常的に使われていた時報と音色等が異なることで違和感や不快感を感じるなど、時報を元に戻してほしいというご意見をいただくようになりました」という。
出典 : 住民が違和感と不快感示す。「Reborn-Art Festival 2019」で青葉市子の作品《時報》が展示見直しへ
確かに「時間を告げる音」というのは日常に根ざしたもので、その時報の音楽でルーティンを行なっている住民の方々からすると、違和感が大きかったのかもしれません。
周知が行き届いていなかったというのもあるのでしょうか。
街を舞台にし、巻き込んだアートの難しさを物語っているように思います。
それでは、中止となった青葉市子さんの『時報』は、どういった音楽だったのでしょうか。ツイッターやインスタグラムで挙がっていました(賛美歌のような荘厳な音色です)。
①朝7時
7時の青葉市子さんの時報
Reborn Art Festival 開催中。#RAF時報 pic.twitter.com/rRmMG9s1SR
— 𝑌𝑜𝑠ℎ𝑖 (@standup_53) 2019年8月5日
②正午
旅が終わり、撮った写真や動画を眺めるしあわせな朝
旧荻浜小学校の校庭で聞いた、青葉市子さんの正午の時報を少しだけ…
涼やかな澄んだ声と蝉の合唱中央に映っているのは、櫻井さんが両手を広げて光を受けていた写真の撮影場所です pic.twitter.com/zPGAIWEOLJ
— ハンカチーコ (@handkerchief38) 2019年8月5日
③夕方17時
石巻 17時の青葉市子さんの時報(やや遠い) pic.twitter.com/ceMqym1elg
— Touchan Records (@TouchanRec) 2019年8月4日
#RAF時報 午後5時 pic.twitter.com/pT7wRnTOY4
— 青葉市子 (@ichikoaoba) 2019年8月7日
アートフェスティバルの主の目的が復興にある以上、住民の方に迷惑がかかっては本末転倒です。中止というのもやむをえないのかもしれません。
一方で、町とアート、町とイベントの関係、町のメリットと住民個人の苦情のバランスという点も考えさせられます。
これは一定期間継続されるアートの展示会なので事情は多少違いますが、たとえばお祭りや花火大会でも騒音やゴミ問題があります。
花火大会は、住んでいる近隣住民からすると風に乗って煙がたくさん届いたり、花火のあとの塵のようなものが道端に転がっています。当然苦情も届いているのでしょうが、町おこし、町全体のメリットを考えて実行しているのでしょう。
今回の中止は、様々な事情を考慮して決められたのかもしれませんが、難しい判断だったのではないでしょうか。
(私は実際には聞けていないのだけど)「時報」の作品というのは、たまたま居合わせた芸術祭の来場者にとっては楽しめるかもしれない。が、つねに耳にする住民にとってはまた違ってくるだろう。いいかたちでの展示再開を願います。https://t.co/bljNcNAfhP
— 橋爪勇介 (@hashizume_y) 2019年8月13日
青葉市子の作品《時報》の件、
音や声の取り扱いの怖さが出た作品になったね。
外で聴くと風向きや反響で不安定になるし、
彼女の美しいけど物悲しさもある声が自然の音と混ざって
ローレライのように感じる人がいたのかも。— きっちょもん (@ii_a_un) 2019年8月13日
RAFを知らずに時報が変わってしまったことに困惑してしまった市民が一定数いるであろうことは地方特有の情報伝達の遅さから推測できるが、反発があったらあったなりの説明義務を果たさずに展示見直しという形を取ってしまったことは青葉市子さんへの敬意があまりになさすぎる
— ヤグチユヅキ@もえるゴミ (@yousun4423) 2019年8月13日
RT
青葉市子ちゃんの時報、私は素敵だなー、私の住む街でも流れたらいいのに、と思っていたから残念だしなんとなくさみしい気持ち。でもそこにはアートとは関係なく暮らすひとたちもいるから、街や暮らしを取り込んで表現するって難しいね。うーん。— naoco (@nao_coimo) 2019年8月13日
リボーンアート青葉市子の時報に寄せられた意見がどのようなに運営側に入ったのか分からないけど、意見した人を内側に引き込むように出来なかったかな?ほとんどの人が聴き流すところをどんな意見にせよその人には引っかかったわけだから… アーティスト側も作品に寄せられた声を必要としてるはず
— キエツ (@Quietsu) 2019年8月13日
地元の時報がめちゃめちゃエモい歌声で何事かと思ったら青葉市子さんの歌声だった。1日3回市内に響き渡っている。
— michi (@Michi33043) 2019年8月11日
石巻で流れている青葉市子さんの「時報」素敵だからぜひみんな聞きに行って欲しい。個人的にはこの作品の存在を知らなくて家族で「なんかいつもと違くない⁉︎」って真相に辿り着くまでの過程もとても楽しかったです。#RAF2019
— はれ⛸❄️🔥 (@hodaka_yoi) 2019年8月7日
石巻の朝7時のチャイムのアレンジが変更になってて、めっっっっちゃ気持ち悪い! あれ毎日なの? 爽快な朝に最悪の気分だよ。超不愉快。なんでホラゲーに出てきそうな曲にしたの? どこをどうしたら朝に似合うと思えるの?
— ギズ (@looksick) 2019年8月3日
1つは石巻市は田舎ならではの、時報(曲)が流れるのだが、それをアーティストがアレンジした芸術的な曲にしてfes期間中は流すらしく1日3回それを「強制的」に聞かされることになる。まあ、別に悪い曲ではないのだが、そもそも芸術って、強制的に聞かされるようなものなのかね。と言う疑問。➡
— 鍛錬家 山本圭一 (@survivalfitness) 2019年8月5日
青葉市子さんの曲は静かで少し寂しい心情のときには寄り添ってくれますが、そうではない人たちやタイミング問わず流れる、というのは、一つの暴力性を持っているとも言えるでしょう。
と同時に、「時間を告げる音」というのは、僕の住んでいる町にもありますが、いつの頃から馴染んでいるかわからないとは言え、そもそもすでに一つの強制力を持っていることもまた一つの発見でした。